コラム『渦』by角田陽一郎

 今や情報技術が進み、一方で自然環境が激変し、人間本来の生き方も、20世紀の大量生産消費を是とする資本主義から、新たなパラダイムへと急速に移行しつつあります。

 既存の、皆が慣習にしていた、規則にしていた、ライフスタイルにしていた、今までの社会の枠組みのことを“フレーム”と呼びます。

 そのまさにフレーム自体が今大きく変わってきています。

 今までの変化は、あくまでフレームの中での変化です。

 でもこれからは、フレーム自体の変化なのです。

 僕はそれを渦((vortex)と読んでいます。

 そして21世紀になり、すでに21年。

 つまり、世界はもうそろそろ次のパラダイムに行くタイミングなのです。

実際、次の枠組みが形成され始めています。

 それは新型コロナウイルスだったり、中国の台頭だったり、情報技術(IT)革命だったり・・・

 そしてさらに大きな変化が起こっています。昨今は異常気象が世界中で起こっています。コロナ禍も続いています。地球環境の激変という変化自体が、それは“異常はもう異常じゃない”という新たなフレームなのです。

 とすると、生き方自体も大きく変わります。今まで異常な生き方にカテゴライズされるような生き方が、ある意味普通になるのです。

 つまり今までの世界を維持してきた様々なフレームは、崩壊したり、もはや維持できなくなっているのです。

そんな中で、日本、さらに日本人は、少子高齢化をかかえ、経済の衰退等、さまざまな問題が今、既存のフレームでは解決できない領域に一気に襲って来ています。

 そんな中、僕たちはどう生きるのか?何を選択するのか?

 あなたがもしサラリーマンでしたら、朝起きて、満員電車に乗って、会社に行き、仕事をし、時に残業で遅くなり、ときに同僚と飲み会をし、週末は家族サービスをする、そういう行為が急に変わったという自覚はないかもしれません。

 でもその一つ一つの行為をしている時の、あなたの意識がちょっとでも変化していたら、それはもう違う行為をしていることと同義なのです。

 つまり、その一人一人の意識の変化が積み重なって世界は次のタームへと移行するんだと思います。

 なぜ今のままでは会社の存続が危ぶまれるのかというと、会社という組織そのものがフレームだからです。

 フレームというのは表計算ソフトのエクセルのようなものです。データを入力すれば設定された関数によって瞬時に計算が行われ、それをもとに表が作成されます。一つの理論によって構築させた世界観です。会社ではこのエクセルのような機能を働く人にも求めてきました。つまり会社はフレームの代表選手です。

 オフィスという固定された施設が用意され、社員は決まった時間にその場所に集まり、決まった席が割り当てられ、決まった時間までそこで働いて、一日の仕事が終わると一斉に帰宅の途に向かうという画一的なスタイルはフレームそのものですよね。

 組織の全員が同一の規範にもとづいて動き、一体となって活動をしています。そこには部外者が入る余地はありませんし、また個々人の思いつきで組織の形が変わることもありません。

 しかしヴォルテックスの時代では、すべてが反転します。

鳴門の渦潮を見ていると、発生した渦は刻々と直系の長さや回転の速さを変えています。常にその形を変化させているのが渦、つまりヴォルテックスです。

 それと同じように、これからの組織は内側から出ていく人もあれば、外側から入ってくる人もいて、枠で囲めなくなっていくようなイメージです。

 つまりヴォルテックス型の社会では決まった場所にオフィスはなくてもよいし、行く時間も決まっていなくていい。端末一つあれば情報は共有できますから、大ぜいの人間が一堂に会する必要もありません。つまり今の働き方を続けていることが効率を悪くするのです。

 例えば、テレビ番組などの映像物などを動画コンテンツと呼びます。

それはテレビというフレームの中にある中身=コンテンツだからです。そのフレームがCDだったならば音楽がコンテンツであり、フレームが雑誌だったら記事がコンテンツなのです。

 でもいまや、誰もが感じるように、雑誌は廃刊が続き、CDは激減し、テレビもかつての勢いを失いつつあります。

 だからといって、ネット上では読み物があふれていますし、音楽もSpotify等のサブスクリプションで聞かれています。映像でいえば、テレビのOA時の視聴率自体が低下しても、それを見逃し配信やYouTubeでスマホで楽しんでいますし、さらにいえば、AbemaTV等のネット自体のオリジナルコンテンツはものすごく増えていますよね。

 つまり、僕らが見たり聞いたり読んだりしているモノは、もはやコンテンツではないのです。

 なぜならそれを格納するフレームがどんどん無くなっていっているからです。

つまりフレームが技術の進化で次のフレームに移行したような従来の変化ではなく、フレーム自体の消滅を意味する根本的な概念の変化です。

でもコンテンツというフレームに縛られた世代は、そのコンテンツをどうヒットさせるかという概念で、さらにぶっちゃけていえば、今までのテレビやレコード会社や出版社という既存のビジネススタイルの売り上げをどう死守するか?

 今までのフレームの中で、

 どう稼ぐか?

 どう生きるか?

 どう生き残るか?

 それについ固執してしまいます。

 でもそれは、悲しいかな、もう通用しないのです。

 いや、逆です、悲しいことなんかありません。コンテンツという概念さえ捨て去れば、実は今まで以上に中身を外部とたやすくアクセスできるのですから。良いモノさえ産み出せば、むしろ今までのように既存のフレームに束縛されずに、自由にモノが産み出せるのです。

 つまり新たなビジネスチャンスは無尽蔵なのです。

 それは新たな生き方も可能な時代の到来なのです。

そんな未来のフィールドで何が産まれるかなんて、実は誰にもわかりません。むしろその不確定さに不安になり、人はつい過去のフレームの中で、実例や、実績、成功体験に固執してしまうのでしょう。

 でも過去ばかり向いて、そんな新たなことは起こらないと言う人は、退屈でつまらないです。

 これから何が起こるかわからない。そんな中で未来の話をすれば、それはペテンかもしれないけれど、それに乗りたいという気持ちを、そんなワクワク感を、実はみんな誰でも持っているんだと思います。そのワクワクの渦に人が集まってきます。

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